「海を渡った人類の遥かな歴史」B・フェイガン著、東郷えりか訳
古代海洋民の航海の実態とその動機に迫った歴史テキスト。
東南アジアの狩猟民の子孫は、少なくとも5万年前には現在のニューギニアやオーストラリアに渡り、やがて太平洋南西部一帯に入植していったという。一方、紀元前3000年ごろには、考古学者がラピタ人と呼ぶ海洋民の新たな世代が、はるかポリネシアとの境にあるフィジー島まで島から島へと旅するようになった。エーゲ海でも遅くとも紀元前8000年には人々は島々を自在に横断するようになっていた。人の移動を証明する黒曜石や陶片、本来生息していなかったはずの動植物の研究などから、それらが分かるという。
大航海時代よりもはるか前、世界の各海域で、海に乗り出した人類の足跡を追う。(河出書房新社 1200円+税)