「古生物学者、妖怪を掘る」荻野慎諧著
古い文献に出てくる不思議な生物や怪異な記載は、科学以前の「科学者」である当時の識者が記したもの。それらの文献を古生物学的視点から読み解いた「妖怪古生物学」エッセー。
日本最古の歴史書「古事記」などにも登場するお馴染みの鬼。誰もがツノのある姿を思い浮かべるが、実在のツノのある動物はすべてが「植物食」で鬼のように獲物に襲いかかるものはいない。7世紀の絵画に描かれた鬼にはツノはなく、どうやら室町時代に作られた「般若」の能面や「百鬼夜行図」などによって鬼にツノがついてしまったと思われると、著者は世の鬼観に訂正を求める。その他、ヤマタノオロチや鵺(ぬえ)、一つ目小僧などを取り上げ、独自の視点からその正体に迫る。
(NHK出版 780円+税)