「飛族」村田喜代子著
養生島に住んでいるのは老女3人。そのうち最年長だった南風原ナオさんが97歳で亡くなった。ウミ子は92歳の母親の鰺坂イオを本土に連れて帰ろうとしたが、そうすると、88歳の金谷ソメ子さんを島に1人残していくことになる。イオは「生まれて90年がとこ、この島に住んで、今が一番悩みもねえで、安気な暮らしじゃ」と言い、島を離れるつもりはない。ウミ子は週に1回やってくる定期船で帰ることにした。町役場の鴫さんがミズイカをもってきてくれたとき、イオとソメ子が崖の上でふわりふわりと飛んでいるように見えた。鴫さんは「たぶん、鳥になる練習をやってるんです」と言う。
死者を火葬にするための木もない小さな島で暮らす、2人の老女の物語。
(文藝春秋 2000円+税)