「あの子はもういない」イ・ドゥオン著 小西直子訳

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 主人公は、かつての青春スターだった父母を持つユン・ソンイ。妹のチャンイとともに、落ちぶれた両親にふりまわされて子ども時代を過ごしたが、母親の交通事故死によって妹は父に、自分は祖父母に引き取られた。

 妹びいきだった父への反発もあって、それ以来ふたりとは疎遠になっていたのだが、ある日突然、妹がある殺人事件の重要参考人になっており、行方も分からないことを知らされる。離れて暮らしていた妹に、一体何があったのか。手がかりを探しに、かつて一緒に暮らしていた家を訪れたソンイは、父と妹の痕跡が全くなく、しかも、高校生になっているはずの妹の服が、すべて子ども服であることに気づいた。

 しかも、家中のあらゆるところに隠しカメラまで仕込まれていたのだ。妹は、そして父は一体ここで、どんな生活をし、いまどこにいるのか。ソンイはその痕跡を探し始める……。

 著者は韓国コンテンツ振興院の「ストーリー作家デビュープログラム」のもと、本作でデビューした韓国の新鋭作家。複雑な家庭環境で育った姉妹の関係を軸に、妹を探す姉の追跡劇をスリリングに描いている。

(文藝春秋 2300円+税)

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