「元禄五芒星」野口武彦著

公開日: 更新日:

 講談・落語の演目に「徂徠豆腐」というのがある。儒学者の荻生徂徠が食うに困っていた時代、豆腐売りの七兵衛が毎日おからを届けてくれ、その後出世した徂徠が火事で焼け出された七兵衛に救いの手を差し伸べたという話だ。本書の「徂徠豆腐考」は、徂徠の学問が「一時にガラリとらちが明いた」決定的瞬間は七兵衛と徂徠との、とんちんかん問答にあったのではという仮説を述べたもの。

 徂徠が一躍有名になったのは赤穂浪士の処分について理路整然とした論を老中の柳沢吉保に述べたことによる。赤穂浪士47人の中で最年少は大石内蔵助の長男・主税だ。討ち入りの際には裏門攻め入りの隊長を務め、若き偉丈夫というイメージが強い。

 しかし忠臣蔵を題材にした当時の読み物の中には、主税=陰間(男娼)のイメージが強くつきまとっていたという。なかには堀部安兵衛と意を通じていたというものも。そんな大石主税の隠れた裏のイメージを引き出したのが「チカラ伝説」である。

 その他、討ち入り費用に関する貨幣理論を説いた「算法忠臣蔵」など、忠臣蔵を軸に元禄時代の世相、思想を虚実を交えて描いた5編を収録。

(講談社 2000円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  4. 4

    大山悠輔に続き石川柊太にも逃げられ…巨人がFA市場で嫌われる「まさかの理由」をFA当事者が明かす

  5. 5

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  3. 8

    どうなる?「トリガー条項」…ガソリン補助金で6兆円も投じながら5000億円の税収減に難色の意味不明

  4. 9

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  5. 10

    タイでマッサージ施術後の死亡者が相次ぐ…日本の整体やカイロプラクティック、リラクゼーションは大丈夫か?