「ふらりと寄席に行ってみよう」佐藤友美著

公開日: 更新日:

 空前の落語ブームで、人気落語家の独演会ともなればプラチナチケットで入手困難だという。しかし、そんな人気落語家の噺を気軽に聞ける場所がある。それが寄席だ。

 200年近くもの間、手軽な娯楽として庶民に親しまれてきた寄席は、ほぼ365日年中無休で、舞台上では落語をはじめ、漫才や太神楽、マジックなど次から次へと演者が登場する。昼の部、夜の部とあるが、入れ替えなしの寄席もあり、客はいつ入場しても、帰っても自由。場内での飲食も自由で、基本的に事前予約は不要で当日券のみなので、好きな日に、好きな時間にふらりと立ち寄れ、何ともフリーダム。

 本書は、そんな寄席の楽しみ方を教えてくれるイラストガイドブック。東京には定席と呼ばれる常設の寄席が5つある。そのひとつで初心者にお薦めという新宿区3丁目の「新宿末廣亭」で、まずは寄席を誌上体験。新宿区の地域文化財に指定されているその建物からして趣がある。

 入り口には、出演者の名前が書かれた「招木」と呼ばれる看板が並ぶ。ちなみにその看板の文字が、落語家は墨色、それ以外の芸人は色文字(主に朱色)で書かれていることから、「色物」といった言葉が生まれたという。

 座敷をイメージした空間で、床の間を配した舞台や椅子席の他に、靴を脱いで上がる桟敷席がある場内、そして開演から終演までの流れなどを紹介。一読すれば、初めての人でも戸惑うことなく楽しめそうだ。

 地方の寄席も網羅。さらに寄席の歴史や、落語をはじめとする寄席の演芸の見どころ聞きどころ、人間国宝の柳家小三治をはじめとする寄席によく出演する落語家・芸人図鑑、そして古典落語のあらすじまで。充実の内容で読者を寄席に誘う。

(辰巳出版 1400円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    日吉マムシダニに轟いた錦織圭への歓声とタメ息…日本テニス協会はこれを新たな出発点にしてほしい

  5. 5

    巨人正捕手は岸田を筆頭に、甲斐と山瀬が争う構図…ほぼ“出番消失”小林誠司&大城卓三の末路

  1. 6

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  2. 7

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    「ばけばけ」苦戦は佐藤浩市の息子で3世俳優・寛一郎のパンチ力不足が一因