「泉鏡花『怪異・幻想』傑作選」白水銀雪訳

公開日: 更新日:

 木曽を旅していた境賛吉は、奈良井に宿をとった。他の客がいないときに知らせてくれるように頼んで、湯殿に行ってみたら、渡り板の通路を通っているとき、電灯がすっと赤くなって一斉に消えた。暗い中をつま先で探りながら脱衣場に向かうと、湯殿で湯が動く気配がして、霧で人肌を包んだような気が項をなでた。女中かと思って、「お米さんか」と声をかけたが、一息おいて「いいえ」という声が聞こえたように思った。思い切って「入りますよ、御免」と言うと、「いけません」と、澄んだ、それでいて湯気に濡れた声がはっきり聞こえた。(「眉かくしの霊」)

 他に「天守物語」「高野聖」など、鏡花の幻想的な作品7編を収録。

(KADOKAWA 1300円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・藤川監督に「裸の王様」の懸念 選手&スタッフを驚愕させた「コーチいびり」

  2. 2

    JFAは森保一氏の“囲い込み”に必死 W杯後の「次の日本代表監督」のウワサが聞こえない謎解き

  3. 3

    TBS「ラヴィット!」の“テコ入れ”に不評の嵐! グダグダぶりを楽しむ独自性損失で視聴者離れ加速危機

  4. 4

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  5. 5

    元横綱照ノ富士「暴行事件」の一因に“大嫌いな白鵬” 2人の壮絶因縁に注目集まる

  1. 6

    小松菜奈&見上愛「区別がつかない説」についに終止符!2人の違いは鼻ピアスだった

  2. 7

    高市首相「私の悲願」やはり出まかせ…消費税減税「断念」に向け経済界・財務省・自民党・マスコミが包囲網

  3. 8

    阿部監督のせい?巨人「マエケン取り失敗」の深層 その独善的な振舞いは筒抜けだった

  4. 9

    《タニマチの同伴女性の太ももを触ったバカ》を2発殴打…元横綱照ノ富士に大甘処分のウラ側

  5. 10

    米国とイランが2週間の停戦合意も日本は存在感ゼロ…お粗末すぎた高市外交を識者「完全失敗」とバッサリ