「クオーレ」デ・アミーチス著 和田忠彦訳

公開日: 更新日:

「アペニン山脈からアンデス山脈へ」――アニメでもお馴染みの「母をたずねて三千里」の原題だ。本書にはその原作が収められている。クオーレ(クオレ)という本の名前は知っていたが、子どもを題材とした悲しい物語を集めたものだろう、と漠然とイメージしていた。

 ところが、イタリア文学の泰斗による翻訳が岩波文庫に入ったのを機に読んでみたら、その実像はまるで違っていた。

 イタリア統一の機運が高じていた時代に幼少年期を過ごした作者のデ・アミーチスは自らも統一運動に身を投じるべく強い愛国心を抱いていた。「クオーレ」には、そうした作者の心情が強く反映されている。

 物語は3つの層から構成され、第1層は中学生(11歳)の少年エンリーコの新学期が始まる10月から翌年7月までの体験が日記風につづられる。その次は、担任の先生が立派な行いの手本として毎月生徒に書き取らせた「今月のお話」。3つ目が、エンリーコの父や母ら家族からの忠告。

 つまり、学校におけるエンリーコの生活ぶりが語られる中で教訓的な美談が挿入され、それらを受けて家族の面々がエンリーコに手紙を書くという形式だ。「母を――」は「今月のお話」のひとつとして登場する。

 その他、お金を恵んでくれた人たちがイタリア人の悪口を言うので、その金を投げ返す少年の話や、あと1人しか乗れない救命ボートを前に、一緒にいた女の子に席を譲った少年の話など、教訓めいた話が収められている。

 全体的に祖国が一つになるという高揚感を鼓舞するトーンだが、注目すべきは、登場する子どもたちがみな貧しく、苛酷な労働に従事していることである。そうした時代の中に「母を――」のマルコを置いてみると、また違った味わいが出てくるように思える。

<狸>

(岩波書店 1140円+税)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「桜を見る会」私物化を白状 下関市長の歪んだ“特権意識”

  2. 2

    “悪党”がゾロゾロ…桜を見る会の怪しい招待客選定プロセス

  3. 3

    名簿破棄の大嘘 安倍首相「シンクライアント」でまた墓穴

  4. 4

    夫は人気漫画家でも格差婚?壇蜜の知られざる超堅実ライフ

  5. 5

    すわ解散か…二階幹事長の“広報指令”に会期末の永田町激震

  6. 6

    「70万円の婚約指輪が小さく感じる」女性の相談が大炎上!

  7. 7

    大往生で称賛記事があふれた中曽根康弘元首相の“犯罪”

  8. 8

    萩生田大臣の発言 あんた総理ファーストじゃなかったっけ

  9. 9

    エ軍大谷が2回目の契約更改へ 投手全休で来季年俸いくら?

  10. 10

    巨人との契約残し…山口俊メジャー挑戦の裏に5億円大豪邸

もっと見る

編集部オススメ

  1. {{ $index+1 }}

    {{ pickup.Article.title_short }}

もっと見る