「後家殺し」山本一力著

公開日: 更新日:

 腕のいい大工として評判の熊五郎は、酒にのまれすぎるのが玉にきず。飲みすぎないようにと女房のおとくからクギをさされていたにもかかわらず、棟梁から前借りしていた金を酒の勢いもあって遊郭ですべて使ってしまった。遊郭での様子を開き直って話す熊五郎に飽きれ果てたおとくは、息子の亀吉を連れて家を出てしまう。

 3カ月後、吉原で仲良くなったおそめが熊五郎のもとにやってきたが、家事を一切しないおそめに我慢できなくなった熊五郎は、おそめと別れることを決意。改めておとくと亀吉を思い起こす羽目に。そんな状況から3年半後、酒をやめ、まじめに働くようになっていた熊五郎に思わぬ出会いが訪れる……。(「子別れ」)

「子別れ」「景清」「後家殺し」「火事息子」「柳田格之進」の5つの落語演題を、小説化した短編小説集。前作「芝浜」に続く、人気の落語演題シリーズだ。落語ファンが演題と比べて楽しむのもよし、落語を知らない人が本書をきっかけに落語を聞いてみるのもよし。人情味あふれる温かい人間模様に見え隠れする、人間の持つ弱さや優しさが心を和ませてくれる。

(小学館 1500円+税)



【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 2

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  3. 3

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  4. 4

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  5. 5

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    今度は横山裕が全治2カ月のケガ…元TOKIO松岡昌宏も指摘「テレビ局こそコンプラ違反の温床」という闇の深度

  3. 8

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    大谷翔平のWBC二刀流実現は絶望的か…侍J首脳陣が恐れる過保護なドジャースからの「ホットライン」