「溺れるものと救われるもの」プリーモ・レーヴィ著 竹山博英訳

公開日: 更新日:

 アウシュビッツ強制収容所の生き残りの著者が、40年の歳月を経て改めてアウシュビッツとは何だったのかを自らと世に問う思索の書。

 歳月による記憶の風化を恐れる氏は、残虐な行為を行った抑圧者たちが不都合な記憶を歪曲し、罪の意識を軽くしていると指摘。同じように犠牲者や遺族にも記憶の風化や歪曲が生じているという。

 一方で、収容所内は何の希望もない多くの囚人とともに、ナチに協力することで生き残りを求めた囚人が存在する複雑な社会で、生き残ったのはそんな灰色の領域の囚人が圧倒的に多かったと明かす。彼らを糾弾するのではなく、そうした状況を強いた者を告発し、残虐な行為を行った者も我々と同じ人間だったことを自戒を込めて説く。

(朝日新聞出版 840円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    【時の過ぎゆくままに】がレコ大歌唱賞に選ばれなかった沢田研二の心境

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    国分太一との協議内容を“週刊誌にリーク”と言及…日本テレビ社長会見の波紋と、噴出した疑問の声

  5. 5

    衆院定数削減「1割」で自維合意のデタラメ…支持率“独り負け”で焦る維新は政局ごっこに躍起

  1. 6

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  2. 7

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    立花孝志容疑者を追送検した兵庫県警の本気度 被害者ドンマッツ氏が振り返る「私人逮捕」の一部始終

  5. 10

    京浜急行電鉄×京成電鉄 空港と都心を結ぶ鉄道会社を比較