「失われたいくつかの物の目録」ユーディット・シャランスキー著 細井直子訳

公開日: 更新日:

「私」は国立図書館の地図部門に置かれた地球儀を見ていて、ツアナキ島に興味をもった。それは1842年から翌年にかけて起きた海洋地震で海に沈んだ島で、記録によると、島民は戦いというものを知らなかったという。私は天国のような場所を想像したが、この島の木の実は一切の知恵を含んでいなかった。ここは避難場所であって追放地ではなかったからだ。

 キャプテン・クックの船がこの島に近づいたとき、島民は、やりやこん棒を空中に突き上げたが、それが威嚇なのか歓迎なのか、クックらには判断できなかった。

 他に、誰にも気づいてもらえない年老いたグレタ・ガルボの呟きなど、さまざまな「喪失」を描く12の物語。

(河出書房新社 2900円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  4. 4

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  5. 5

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  1. 6

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    矢地祐介との破局報道から1年超…川口春奈「お誘いもない」プライベートに「庶民と変わらない」と共感殺到

  4. 9

    渡邊渚“逆ギレ”から見え隠れするフジ退社1年後の正念場…現状では「一発屋」と同じ末路も

  5. 10

    巨人FA捕手・甲斐拓也の“存在価値”はますます減少…同僚岸田が侍J選出でジリ貧状態