「十字架のカルテ」知念実希人著

公開日: 更新日:

 光陵医大雑司ケ谷病院の新人医師、弓削凜は院長の影山に頼み込み、事件の精神鑑定の助手を務めることになった。

 歌舞伎町無差別通り魔事件の犯人の面談を経験してから2カ月、凜は母子心中事件の精神鑑定を担当することに。母親の美里がマンションから乳児を投げ落とした事件で、当初、美里には重度の産後うつ症状があり、貧困妄想に陥っていたと思われた。

 しかし面談が進むにつれ、美里は犯行の直前、悪魔に子供を殺せと脅されたのだと言い出し、凜は美里の詐病を疑う。心神喪失者の行為は罰しない。元看護師の美里はそのことを知っていたのではないか……。

 凜が美里の矛盾を一つずつ解き明かす中、突如、影山が美里に「あなたは裁かれることはない。責任はないのだから」と言い放つ――。

 犯罪を誘発させた心の奥にある闇を暴く連作ミステリー。精神疾患による犯罪に見せかけた復讐劇や、引きこもりの若者が優秀な姉を刺した本当の理由など、現代人が抱える家族問題を浮き彫りにしていく。凜が、精神鑑定を学ぶ決意をさせた事件の関係者の精神鑑定も描かれる。

(小学館 1400円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    コメ増産から2カ月で一転、高市内閣の新農相が減産へ180度方針転換…生産者は大混乱

  2. 2

    沢口靖子「絶対零度」が月9ワースト目前の“戦犯”はフジテレビ? 二匹目のドジョウ狙うも大誤算

  3. 3

    “裸の王様”と化した三谷幸喜…フジテレビが社運を懸けたドラマが大コケ危機

  4. 4

    ソフトバンクは「一番得をした」…佐々木麟太郎の“損失見込み”を上回る好選定

  5. 5

    ヤクルトのドラフトは12球団ワースト…「余裕のなさ」ゆえに冒険せず、好素材を逃した気がする

  1. 6

    小泉“セクシー”防衛相からやっぱり「進次郎構文」が! 殺人兵器輸出が「平和国家の理念と整合」の意味不明

  2. 7

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  3. 8

    菅田将暉「もしがく」不発の元凶はフジテレビの“保守路線”…豪華キャスト&主題歌も昭和感ゼロで逆効果

  4. 9

    元TOKIO国分太一の「人権救済申し入れ」に見る日本テレビの“身勝手対応”

  5. 10

    “気分屋”渋野日向子の本音は「日本でプレーしたい」か…ギャラリーの温かさは日米で雲泥の差