「オリジン・ストーリー 138億年全史」デイヴィッド・クリスチャン著 柴田裕之訳

公開日: 更新日:

 われわれはどこから来て、どこへ向かうのか――。本書は、宇宙学、人類学、考古学、歴史学など各専門分野に分断されたヒストリーではなく、宇宙の始まりから宇宙の終わりまで見渡す全体の物語「ビッグヒストリー」に挑んだ話題の書。

 本書では、単純だった宇宙に複雑なものが生まれ、さらに複雑さが増大していく過程で、世界がいくつもの臨界点を超えていく道筋が描かれる。

 始まりのビッグバンから、恒星や銀河の誕生、生命の芽生え、人間の出現、農耕の始まり、化石燃料革命、グローバル化社会の出現など、いくつもの臨界点を超えてきたこの世界で、人間という種とはどのような存在だったのか。酸素と食料を補給しつつ情報を読み解き、言葉で伝えあうことによって、地域や世代を超えた「集合的学習」ができるようになった人間は、いま莫大なエネルギーを手にし、その結果として生命に適した生物圏のサーモスタットが狂い始めている。

 果たして人間は、地球を破滅に追いやることなく次の未来へと導くことができるのか。自覚のないまま地球のパイロットになった人類に与えられた課題は重い。

(筑摩書房 2200円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

  2. 2
    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

  3. 3
    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

  4. 4
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 5
    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

  1. 6
    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

  2. 7
    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

  3. 8
    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

  4. 9
    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

  5. 10
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗