「江戸とアバター」池上英子、田中優子著

公開日: 更新日:

 江戸社会と現代の仮想世界の意外な相似形を明らかにしながら、役割に固執し自己同一性の呪縛にとらわれた日本人に本来のしなやかな生き方への回帰を促す論考集。

 米国在住の歴史社会学者の池上氏は、俳諧師・画家・思想家であり藩士でもあった渡辺崋山と、京都の絵師・横山崋山という東西の崋山の生き方を例に、江戸はユニバースを超えた「マルチ・バース」(多元的社会)であり、江戸人はアバター(キャラクター)を切り替えながら生きていたと説く。さらに落語を究極の「アバター芸」だという氏は、落語家の柳家花緑氏とも対談。

 一方の田中氏は、江戸時代の人々がアバターを多用自在に展開することで江戸文化を形成していたことを明らかにしながら、江戸精神の神髄に迫る。

(朝日新聞出版 890円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  2. 2

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  3. 3

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 4

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  5. 5

    巨人大ピンチ! 有原航平争奪戦は苦戦必至で投手補強「全敗」危機

  1. 6

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 7

    衝撃の新事実!「公文書に佐川氏のメールはない」と財務省が赤木雅子さんに説明

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    高市首相が漫画セリフ引用し《いいから黙って全部俺に投資しろ!》 金融会合での“進撃のサナエ”に海外ドン引き

  5. 10

    日本ハムはシブチン球団から完全脱却!エスコン移転でカネも勝利もフトコロに…契約更改は大盤振る舞い連発