「へんぶつ侍、江戸を走る」亀泉きょう著

公開日: 更新日:

 将軍の駕籠(かご)を担ぐ御駕籠之者組の一員、明楽久兵衛は、江戸の下水を熟知する変物(へんぶつ)で通っている。芸者の愛乃(えの)に夢中だったのだが、水茶屋の前で番太に、愛乃がついさっき死んだと知らされた。早桶代わりの油樽をのぞいて、久兵衛は思わず息を止めた。愛乃の両目は落ちくぼみ、舌先が唇から出ている。銀の簪(かんざし)を愛乃の唇に差し込むと黒く変色した。これは一服盛られたな……。

 久兵衛が愛乃に贈るつもりで注文しておいたすだれには愛乃の大首絵が描かれていた。久兵衛はそれを将軍の駕籠の御簾(みす)に貼ったが、それを見た老中は息をのんだ。あの女だ。

 一人の芸者の死によって明るみに出た政争を描く、新鋭の時代小説。

(小学館 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 2

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  3. 3

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  4. 4

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  5. 5

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    今度は横山裕が全治2カ月のケガ…元TOKIO松岡昌宏も指摘「テレビ局こそコンプラ違反の温床」という闇の深度

  3. 8

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    大谷翔平のWBC二刀流実現は絶望的か…侍J首脳陣が恐れる過保護なドジャースからの「ホットライン」