「へんぶつ侍、江戸を走る」亀泉きょう著

公開日: 更新日:

 将軍の駕籠(かご)を担ぐ御駕籠之者組の一員、明楽久兵衛は、江戸の下水を熟知する変物(へんぶつ)で通っている。芸者の愛乃(えの)に夢中だったのだが、水茶屋の前で番太に、愛乃がついさっき死んだと知らされた。早桶代わりの油樽をのぞいて、久兵衛は思わず息を止めた。愛乃の両目は落ちくぼみ、舌先が唇から出ている。銀の簪(かんざし)を愛乃の唇に差し込むと黒く変色した。これは一服盛られたな……。

 久兵衛が愛乃に贈るつもりで注文しておいたすだれには愛乃の大首絵が描かれていた。久兵衛はそれを将軍の駕籠の御簾(みす)に貼ったが、それを見た老中は息をのんだ。あの女だ。

 一人の芸者の死によって明るみに出た政争を描く、新鋭の時代小説。

(小学館 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「転職者は急増」なのに「人材派遣会社は倒産」が増えているワケ

  2. 2

    俳優・山口馬木也さん「藤田まことさんは『飲め、飲め』と息子のようにかわいがってくれた」

  3. 3

    驚きの品揃え! ダイソーでほぼすべて揃う「防災グッズ」の実力は?

  4. 4

    優勝の祝儀で5000万円も タニマチに頼る“ごっつぁん体質”

  5. 5

    前代未聞の壮絶不倫・当事者のひとりがまたも“謎の欠場”…関係者が語った「心配な変化」とは???

  1. 6

    長嶋一茂はこんなにも身だしなみを意識している? VIOはもちろんアンチエイジングも

  2. 7

    大関・大の里すでに「師匠超え」の鋼メンタル!スキャンダル報道もどこ吹く風で3度目賜杯

  3. 8

    大関・大の里3度目優勝で期待される「大豊」時代の幕開け…八角理事長も横綱昇進に期待隠さず

  4. 9

    自信なくされたら困るから? 巨人・田中将大がカブス戦登板「緊急回避」の裏側

  5. 10

    国民民主党はやっぱり与党補完勢力だった! 企業・団体献金「存続」で自民党に塩を送る罪深さ