「楽園の烏(からす)」阿部智里著
安原はじめは養父から山を相続した。「あの山を売ってくれませんか」と何人かが訪ねてきた後、最後に、幽霊を自称するおぞけをふるうような美女が、養父から、あの山の秘密を教えるよう頼まれたと、はじめを迎えに来た。地下鉄とトラックを乗り継ぎ、木箱に押し込まれて着いたのは、奈良の大仏殿のような所だった。
はじめが名を名乗ると、雪斎という男が現れ、この地がはじめが相続した荒山で、自分たちは「山内(やまうち)」という異界を守る八咫烏(やたがらす)の一族だと名乗る。彼らと争って負けた「猿」という一族の生き残りが八咫烏の中に紛れており、それを探して根絶やしにするのが使命だという。
八咫烏シリーズの最新作。
(文藝春秋 1500円+税)