妻の一言がなければ…プロレスラーの高橋匡哉さん難病「スティーブンス・ジョンソン症候群」との闘い
高橋匡哉さん(プロレスラー/38歳)=スティーブンス・ジョンソン症候群
風邪と診断されて薬を飲んだら赤いブツブツと熱が出て、何日も高熱が続き、このまま死ぬんじゃないかと思いました。目をつぶると、誰かに“あっち”の世界へ連れていかれるような感じがして、眠るのが怖くて眠れませんでした。
「スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)」は、全身のあらゆるところに赤い発疹やびらん(ただれ)や水疱ができ、皮膚や粘膜が壊死していく病気で、日本語で「皮膚粘膜眼症候群」と呼ばれる指定難病です。早期に適切な治療をすれば回復するけれど、発見が遅れると死亡することもあるような怖い病気。詳しいことはわかりませんが、難病情報センターのサイトでは「人口100万人あたり年間2.5人の頻度で発症」とされています。
始まりは2022年の11月上旬だったと思います。だるさと熱があったので、風邪だと思って様子を見たものの、数日治らなかったため近所の内科に行きました。PCR検査を受けて、コロナ感染症ではないとわかると、「普通の風邪でしょう」となって風邪薬が処方されました。
それを飲んだ翌日、顔や手に赤いブツブツができはじめました。別に痛みはなく、かゆい感じ。以前にも風邪薬で唇が腫れたりしたことがあったので、またそれかなと思い、気にしませんでした。でも、その翌日には41.5度の高熱が出て幻覚を見るようになったのです。
アッという間に赤いブツブツは頭の先から足の先までくまなく広がり、目も充血していました。それを見た妻が、「ただごとじゃないから病院に行った方がいいよ」と言うので、今度は近所の皮膚科に行ってみたところ、いきなり「これはうちでは診られないから大学病院に行ってください」と紹介状を出されました。
大学病院へ行ってみると、問診の段階でSJSっぽいと言われ、「すぐ入院してください」と急展開。医師の話では、早くしないと失明の危険もあるし、内臓の機能不全や壊死を起こす病気だと説明され、入院せざるを得ませんでした。
妻に「このまま入院することになった」と電話して、着替えなどを持ってきてもらいました。ただ、ちょうどその頃、コロナ感染症が再燃していて、院内はコロナの患者だらけだったので家族の面会もかなわず、必要なものは受付に預けてもらう方式でした。
治療内容はよくわかりませんが、珍しい病気であることを物語るように、診察時には10人ぐらいの先生がズラ~ッといたことを覚えています。眼科や皮膚科や泌尿器科など、いろいろな科にお世話になりました。
主な治療は点滴と塗り薬と飲み薬。ステロイドっていうのかな、強い薬を大量投与したのでしょうね。髪の毛がゴソッと抜けました。一番きつかったのは排尿排便。痛すぎてトイレに行くのが嫌でしたもん。その痛みが引くまで2カ月ぐらいかかったんじゃないかな。
目も痛かったけれど、「早期でよかった」と先生に言われ、事なきを得ました。自分は病院嫌いだし、痛みにも強いから妻の一言がなければ発見が遅れ、失明していたかもしれません。