「現代語訳 怪談『諸国百物語』」志村有弘訳

公開日: 更新日:

 百物語とは、100本の灯をともした部屋で怪談話を語り、1話話し終えるたびに1本の灯を消し、部屋が真っ暗になったときに怪奇現象が起こるという言い伝えのこと。江戸時代に流行した百物語には、「御伽百物語」「太平百物語」などさまざまなものがあるが、本書は北は奥州仙台から南は九州筑前・筑後に伝わる書承話や口承話などを集めた太刀川清校訂の「百物語怪談集成」(叢書江戸文庫2 国書刊行会)の現代語訳版だ。

 たとえば、「七十二 長谷川長左衛門の娘、蟹を寵愛した事」では、容姿端麗で心優しい娘が、手水桶にいた小さな蟹(カニ)をかわいがっていたが、近くの縁にすむ大蛇に執心されたため、父親の命を守るために大蛇の元に行くことになった話が語られる。

 余命いくばくもないと悟った娘がかわいがっていた蟹を自由にしてやったところ、大蛇との約束の日に娘の元に大きな蟹が現れ、大蛇にハサミを立てて追い払ったという。

 ほかにも、後妻の元に死んだ元妻が現れ、相撲で決着をつけようとする「九十四 粟田左衛門介の女房、死んで相撲を取りに来た事」など、奇想天外な話が楽しめる。

(河出書房新社 2200円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  3. 3

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  4. 4

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  5. 5

    坂口健太郎に永野芽郁との「過去の交際」発覚…“好感度俳優”イメージダウン避けられず

  1. 6

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  2. 7

    板野友美からますます遠ざかる“野球選手の良妻”イメージ…豪華自宅とセレブ妻ぶり猛烈アピール

  3. 8

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景