「現代語訳 怪談『諸国百物語』」志村有弘訳

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 百物語とは、100本の灯をともした部屋で怪談話を語り、1話話し終えるたびに1本の灯を消し、部屋が真っ暗になったときに怪奇現象が起こるという言い伝えのこと。江戸時代に流行した百物語には、「御伽百物語」「太平百物語」などさまざまなものがあるが、本書は北は奥州仙台から南は九州筑前・筑後に伝わる書承話や口承話などを集めた太刀川清校訂の「百物語怪談集成」(叢書江戸文庫2 国書刊行会)の現代語訳版だ。

 たとえば、「七十二 長谷川長左衛門の娘、蟹を寵愛した事」では、容姿端麗で心優しい娘が、手水桶にいた小さな蟹(カニ)をかわいがっていたが、近くの縁にすむ大蛇に執心されたため、父親の命を守るために大蛇の元に行くことになった話が語られる。

 余命いくばくもないと悟った娘がかわいがっていた蟹を自由にしてやったところ、大蛇との約束の日に娘の元に大きな蟹が現れ、大蛇にハサミを立てて追い払ったという。

 ほかにも、後妻の元に死んだ元妻が現れ、相撲で決着をつけようとする「九十四 粟田左衛門介の女房、死んで相撲を取りに来た事」など、奇想天外な話が楽しめる。

(河出書房新社 2200円+税)

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