「下町やぶさか診療所 いのちの約束」池永陽著

公開日: 更新日:

 近年、専門病院とかかりつけ医との連携が重要視されている。かかりつけ医とは「何でも相談できるうえ、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」のこと。いわば医療現場の土台を担う大事な役どころであり、町医者という言葉もほぼ同義だろう。本書は、東京下町の浅草を舞台にした町医者の物語。

【あらすじ】真野麟太郎は浅草警察署のすぐ近くに診療所を構える64歳の医師。診療所の前が緩やかな坂になっているので、近所の人たちから親しみを込めて「やぶさか診療所」と呼ばれている。「大先生」の麟太郎には大学病院に勤めている息子・潤一(若先生)がいて、ときどき診療の手伝いに来ている。29歳のイケメンで患者にも人気があるのだが、いささか気弱なのが玉にキズ。

 診療所には元ヤンキーの女子高生・麻世が同居している。訳あって麟太郎が預かることになったのだが、麻世は超美形でおまけに武術の達人。潤一はその麻世に恋心を抱いているのだが、麻世は優柔不断な潤一のことを歯牙にもかけない。

 そんな診療所にはさまざまな人が訪れる。甘味処の入り婿と恋に落ちて子供を宿し、麟太郎を介して相手にそのことを告げる保険外交員の恭子。寝たきりで意識のない妻に、思い出のカレーを食べさせてやりたいと麟太郎に相談する畳職人の伸之。難病にかかっていて最後の願いを麟太郎に託す幼馴染みの看板屋の章介などなど。

【読みどころ】医は仁術という言葉を実践するような人情味あふれる町医者物語だが、麻世をはじめ、個性的なキャラクターが起伏ある物語に仕立てている。 <石>

(集英社 700円+税)

【連載】文庫で読む 医療小説

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    U18高校代表16人の全進路が判明! プロ志望7人、早大&青学だけで計4人、社会人は2人

  2. 2

    「タンス預金2000万円」相続税はどうやってバレる? 税務署が追う“亡き親の出金”

  3. 3

    巨人“37歳大物トリオ”の来季はどうなる?「田中将大は楽天に帰すのでは」の見立てまで

  4. 4

    中学時代をジャージーで過ごした鈴木奈穂子が、法政大女子高から大学に内部進学してNHK人気アナになるまで

  5. 5

    田中将大が楽天を去った本当の理由…退団から巨人移籍までに俺とした“3度の電話”の中身

  1. 6

    小川晶市長の“ラブホ密会”はなぜ許されたのか? 《前橋の有権者の感覚疑うわ》との批判も

  2. 7

    北島三郎(4)「毎日が目標です。後ろへは戻れない」 地元・八王子のイベントで生涯現役宣言

  3. 8

    佐藤輝明「三冠王」なら年俸いくら? メジャー流出阻止へ阪神が用意する破格の条件

  4. 9

    WEST.重岡大毅の結婚にファンの怒りと落胆…“祝福されないアイドル”がやらかす「3つの誤算」

  5. 10

    高市内閣“小幅”改造の真の目的…首相は「挙党体制」を建前に党総裁選のライバル潰しに虎視眈々