「きりきり舞いのさようなら」諸田玲子著

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 人気戯作者十返舎一九の娘・舞はある朝、普段と違う雰囲気を感じた。普段なら二日酔いで寝過ごしている継母・えつが早朝から朝餉(あさげ)の支度をし、筆が乗らずに怒鳴り散らすのが常の一九が朝から仕事をしていたからだ。

 舞は、めったにない状況に不吉な予感がしたのだが、程なくして予感が的中。近場から火が出て、一九、えつ、舞の亭主の尚武、養子の丈吉、葛飾北斎の娘で居候のお栄ともども焼け出されてしまったのだ。逃げる途中で捨てられた老婆まで拾う羽目になり、増上寺境内のお救い小屋に身を寄せたものの、長居をするわけにもいかず、とりあえず北斎先生の借家に転がり込んだ。勝手気ままに振る舞う家族に翻弄されながら、なんとか生活を立て直そうと舞は奮闘するのだが……。

 一九の気丈な娘・舞が、一九の周囲に集まる人々に頼られながらなんとか切り盛りする人気の「きりきり舞い」シリーズ最新刊。今回も幽霊騒ぎや盗難騒ぎが起こったり、香典目当てに十返舎一九の野辺送りをすることになったりと一筋縄でいかない事件がてんこ盛り。個性的な登場人物の軽妙なやりとりも楽しい。

(光文社 1760円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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