「最後に『ありがとう』と言えたなら」大森あきこ著

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 家族が安心して亡くなった人との最後のお別れができるよう、遺体の処置をして棺(ひつぎ)に納める役割を担う納棺師。本書は、父親の葬儀をきっかけに納棺師という仕事をしようと決心し、4000人以上の見送りをしてきた女性納棺師がつづった別れの物語。

 亡くなった夫の手で頭をなでてほしいとリクエストする妻、死んだ子にお気に入りの洋服を着せてずっと抱きしめていた母親、携帯に残した母親の声をずっと聞いていた娘など、身近な人の死に直面した家族が、最後にどんな時間を過ごすことで家族の死を受け入れていくのか。ひとつとして同じではない別れの形を、納棺師の立場からつづっている。

 たとえば、桜の季節に80代の一家の主が亡くなった際のエピソードも印象深い。通常なら部屋の中に棺を入れるはずが、毎年庭の桜の木を見ながら家族で花見をしていたことを聞き、急きょ棺台を桜の木の下に置くことに変更。家族も一緒に庭に出てワインを飲みつつ最後の花見をしたという何ともうらやましい最後の時間を紹介。大切な人をどう見送りたいか、そして自分がどう見送られたいか、考えたくなる一冊だ。

(新潮社 1485円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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