宮内悠介(作家)

公開日: 更新日:

6月×日 難民支援のための募金をしたところ、国連UNHCR協会からめちゃくちゃレターが来るようになった。そのなかにひとつ、「With You」6月号なるニュースレターがあった。読んでみると興味深い。こう言って許されるなら、おもしろい。

6月×日 サラ・ピンスカー著「いずれすべては海の中に」(市田泉訳 竹書房 1760円)が送られてくる。もらった以上はSNSで紹介しなければと読みはじめたら、おもしろくて仕事そっちのけで没頭してしまう。文章、アイデア、情景とそれぞれに美しい奇想短編集。

6月×日 自分の小説にロシアンルーレットを登場させようとしたが、よく考えたら、人間がロシアンルーレットなどするはずもなく、立ち止まる。でも実際やる人はいる。なぜだと調べはじめ、そのうちに興味が移り、小林宏明著「銃を読み解く23講」を読む。朝になる。仕事は進まない。

6月×日 コロナ禍で活字が頭に入らないことが増えた。単に調子の問題かもしれない。しかし不思議とミステリは読めるので、知念実希人著「硝子の塔の殺人」に着手する。やめられなくなり朝になる。なんでこんな話をこんなにもおもしろく書けるのだろう。

6月×日 SFの創作講座でゲスト講師をやるため、話すことを考える。論旨に沿った実例がほしい。確か小川一水さんの「フリーランチの時代」にぴったりの短編があったはずだと読みはじめ、夢中になって空が白む。目当ての短編はなかった。別の作品集だったみたいだ。

6月×日 阿津川辰海さんの短編集「入れ子細工の夜」(光文社 1980円)を打ち合わせの狭間に読む。収録作の「二〇二一年度入試という題の推理小説」を電車内で読んでいて、声を出して笑ってしまう。恥ずかしい。あふれる技巧とユーモアの4編。

6月×日 岡真理著「ガザに地下鉄が走る日」(みすず書房 3520円)を読む。これは迂闊に言葉にできない。紹介にならないが、とりあえず記録として残す。

【連載】週間読書日記

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松井秀喜氏タジタジ、岡本和真も困惑…長嶋茂雄さん追悼試合のウラで巨人重鎮OBが“異例の要請”

  2. 2

    7代目になってもカネのうまみがない山口組

  3. 3

    巨人・田中将大と“魔改造コーチ”の間に微妙な空気…甘言ささやく桑田二軍監督へ乗り換えていた

  4. 4

    福山雅治のフジ「不適切会合」出席が発覚! “男性有力出演者”疑惑浮上もスルーされ続けていたワケ

  5. 5

    打者にとって藤浪晋太郎ほど嫌な投手はいない。本人はもちろん、ベンチがそう割り切れるか

  1. 6

    文春が報じた中居正広「性暴力」の全貌…守秘義務の情報がなぜこうも都合よく漏れるのか?

  2. 7

    DeNA藤浪晋太郎がマウンド外で大炎上!中日関係者が激怒した“意固地”は筋金入り

  3. 8

    収束不可能な「広陵事件」の大炎上には正直、苛立ちに近い感情さえ覚えます

  4. 9

    横浜・村田監督が3年前のパワハラ騒動を語る「選手が『気にしないで行きましょう』と…」

  5. 10

    吉村府知事肝いり「副首都構想」に陰り…大阪万博“帰宅困難問題”への場当たり対応で露呈した大甘な危機管理