「あの子とQ」万城目学著

公開日: 更新日:

 主人公は両親も吸血鬼という嵐野家の一人娘、弓子。といってもこの現代で吸血などできるはずもなく、人間と同じように太陽の下でふつーの生活を送る、「脱吸血鬼化」した吸血鬼だ。

 そんなある日、弓子のもとに、トゲトゲの物体「Q」が突然現れる。17歳の誕生日までの10日間、弓子が本当に血を吸わないか監視に来たという。高校生の弓子にとってはうっとうしい限りだが、親友の「ヨッちゃん」が思いを寄せる豪太の好みをリサーチするなど、役に立つこともある。

 ところが弓子の楽しい高校生活は一転。ヨッちゃんらとのダブルデートの帰りのバスが転落し、全員が大けがを負う。弓子の目の前には瀕死の豪太が。土砂降りの雨の中、弓子は血の匂いにむせ……。

鴨川ホルモー」など奇想天外な物語を世に送り出してきた著者による、青春吸血鬼ストーリー。

 物語は後半、日本人の吸血鬼第1号を名乗る「佐久」と共に消えた弓子の「Q」捜しが描かれる。吸血してこそ吸血鬼という「宿命派」との攻防戦、捕らわれた「Q」の過去、やがてその正体が明らかになる。

 ユーモアのある筆致でつづられる現代の吸血鬼ワールドを堪能あれ。

(新潮社 1760円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  3. 3

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 4

    阪神・大山を“逆シリーズ男”にしたソフトバンクの秘策…開幕前から丸裸、ようやく初安打・初打点

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    創価学会OB長井秀和氏が明かす芸能人チーム「芸術部」の正体…政界、芸能界で蠢く売れっ子たち

  2. 7

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  3. 8

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  4. 9

    大死闘のワールドシリーズにかすむ日本シリーズ「見る気しない」の声続出…日米頂上決戦めぐる彼我の差

  5. 10

    ソフトB柳田悠岐が明かす阪神・佐藤輝明の“最大の武器”…「自分より全然上ですよ」