「牧野富太郎 草木を愛した博士のドラマ」光川康雄著

公開日: 更新日:

「牧野富太郎 草木を愛した博士のドラマ」光川康雄著

 人生のすべてをかけて植物研究に励んだ博士。その努力と熱意もさることながら、それが可能だったのは博士の夢の実現を経済的に支えたり、温かく見守る人々の存在があってこそ。本書は、博士をとりまく人物たちにも焦点を当てた人物伝。

 小学校中退の学歴しかない博士だが、寺子屋や地元領主が開いた郷校でレベルの高い教育を受けていた。そもそも故郷の佐川に、学問を尊ぶ風土が根付いていたからこそ、博士はその才能を伸ばすことができたともいえる。

 佐川は、博士以外にも宮内大臣を務めた田中光顕や中央大学創立者の土方寧、土木学者の広井勇ら多彩な人物を輩出。田中や土方は、博士を窮乏から救った恩人でもある。

 ほかにも、出入りを許してくれた東大の植物学教室の教員・矢田部良吉や、「まるで放蕩(ほうとう)息子を1人抱えているようだ」と冗談を言いつつも、渋谷で「待合」を経営して家計を助けた妻の壽衛や、壽衛亡き後の研究と生活を支えた次女の鶴代など、博士とその挑戦を陰に陽に支えた家族と先輩、友人らとのドラマを紹介。

(日本能率協会マネジメントセンター 1705円)


【連載】好奇心発動!天真らんまんな「牧野富太郎本」特集

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    号泣の渋野日向子に「スイングより、歩き方から見直せ!」スポーツサイエンスの第一人者が指摘

  2. 2

    崖っぷち渋野日向子に「日本人キャディーと縁を切れ」の声…外国人起用にこれだけのメリット

  3. 3

    だから今年の日本女子オープンはつまらない…“簡単コース”で予選カットラインは史上最少「-1」

  4. 4

    森保監督がブライトン三笘薫を代表招集外にしたウラ側…10日パラグアイ戦、14日ブラジル戦へ

  5. 5

    今オフ日本史上最多5人がメジャー挑戦!阪神才木は“藤川監督が後押し”、西武Wエースにヤクルト村上、巨人岡本まで

  1. 6

    日本ハム最年長レジェンド宮西尚生も“完オチ”…ますます破壊力増す「新庄のDM」

  2. 7

    フリーの風間俊介&生田斗真は大活躍も…旧ジャニ「ドラマ班」次世代は“自称”止まりの寂しい現状

  3. 8

    テレビはグルメ、熊、線状降水帯ばかり…もっと大事なことを放送したくないための隠れ蓑か

  4. 9

    前代未聞の壮絶不倫・当事者のひとりがまたも“謎の欠場”…関係者が語った「心配な変化」とは???

  5. 10

    次の自民党総裁選が誰でも菅義偉が“陰の主役”…絶対王者の力の源泉は何なのか?