「羅城門に啼く」松下隆一著

公開日: 更新日:

「羅城門に啼く」松下隆一著

 飢饉と疫病で、至る所にむくろが放置された平安京で、イチはヤマとクマと何とか生き延びていた。親の顔も知らず、奴婢として売られた家から逃げ出したイチにとって、2人は初めてできた仲間だった。3人は、生きるため盗みも殺人もちゅうちょはしない。

 ある夜、3人で油商人の屋敷に忍び込むが、イチとクマが捕まってしまう。クマに続いて首をはねられようとした寸前、イチは現れた坊主によって命を救われる。以来、イチは空也上人と呼ばれるその坊主に言われるまま、放置されたむくろの埋葬を手伝う。ある日、埋葬を頼まれた遊女の遺体を見てイチの心が騒ぐ。イチらが殺した油商人夫妻の娘だったのだ。墓場で埋めようとすると、遊女が息を吹き返す。

 荒れ果てた世の底辺で生きる若者の魂の再生を描く京都文学賞受賞作。

(新潮社 605円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    広陵・中井監督が語っていた「部員は全員家族」…今となっては“ブーメラン”な指導方針と哲学の数々

  2. 2

    11歳差、バイセクシュアルを公言…二階堂ふみがカズレーザーにベタ惚れした理由

  3. 3

    中居正広氏は法廷バトルか、泣き寝入りか…「どちらも地獄」の“袋小路生活”と今後

  4. 4

    【広陵OB】今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  5. 5

    二階堂ふみと電撃婚したカズレーザーの超個性派言行録…「頑張らない」をモットーに年間200冊を読破

  1. 6

    開星(島根)野々村直通監督「グラウンドで倒れたら本望?そういうのはない。子供にも失礼ですから」

  2. 7

    最速158キロ健大高崎・石垣元気を独占直撃!「最も関心があるプロ球団はどこですか?」

  3. 8

    風間俊介の“きゅるるん瞳”、庄司浩平人気もうなぎ上り!《BL苦手》も虜にするテレ東深夜ドラマの“沼り力”

  4. 9

    前代未聞! 広陵途中辞退の根底に「甲子園至上主義」…それを助長するNHK、朝日、毎日の罪

  5. 10

    山下美夢有が「素人ゴルファー」の父親の教えでメジャータイトルを取れたワケ