「TOKYO EYE WALKING」中野正貴著

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「TOKYO EYE WALKING」中野正貴著

 木村伊兵衛写真賞を受賞した「東京窓景」をはじめ、長年、東京を撮り続けてきた写真家の最新作品集。

 そこに収まっているのは、多くの人が東京に抱いているイメージとは若干異なる東京の風景だ。

 ほとんどの作品に、場所を特定できるようなランドマーク的な建物もオブジェも写っておらず、一目見ただけではそこが東京だとは分からない。

 お店のショーウインドーを写した一枚。バーだろうかカフェだろうか、ガラス越しに見える店内にはビールなどの酒瓶やグラス、そしておすすめメニューなどが見える。そうした店内の風景に、街中の看板や街路樹、はためくのぼり、鉄橋と、その下を歩く通行人など、ショーウインドーのガラスに映る店の外側の風景が重なり、複雑な風景を作り出している。

 よく見ると、それを撮影している著者の手も写り込んでいる。その手にあるのはiPhoneだ。なんと、本書に収められた作品は、すべてiPhoneによって撮影されたものだという。

 移動中「ふと見かけた日の光や人々の所作に心が動くがカメラを準備している間に状況が変わってしまう経験」は誰にでも心当たりがあると思う。

 著者は、そんな些細な出来事に反応して、「回遊する視覚に寄り添うような奔放な写真があってもいい」と、あえて瞬きするようにiPhoneのシャッターを切ったそうだ。

 ショーウインドーの中と外の世界が幾重にも重なり、迷宮のような風景を作り出している作品はほかにもある。

 ある作品では、美容院と思われる店内で個性的な洋服を着たキャストが客の髪をカットしている姿に、店外に置かれたバイクや道路を挟んで反対側のマンションやガソリンスタンドの看板が重なる。さらによく見ると、店内のソファに座っている客と、同じ客が鏡に映る姿、オブジェや椅子など、いくつもの風景が、フィルムを重ねたように層をなしており、新たな風景が生まれている。

 ほかにも、テイクアウトのエスニック料理店で働く人々を写した一枚や、配線がこんがらがり、混沌とした様相のガード下を背の高い外国人男性が歩いている写真など、メニューの日本語や「おとなのおもちゃ」の看板などで、かろうじて日本だと分かるが、見知らぬ異国の街角のスナップにも見える作品もある。

 廃業して時間が経過しているのか、風雨にさらされた外観に電線の影が映り、現代アートのようなリズムを生み出している元レストラン、いつもは路上まではみだした酔客で賑わっているが雨で閑散としている飲み屋街、街灯に照らされた工事現場の防音壁と道路が雨水で光り輝く中を歩く2人連れなど。

 スマホ撮影によるちょっとざらついた画面が、東京の息遣いそのもののように感じられる。

 無機質な近代的な都市の風貌とは異なる、「世界中探してもほかのどこにも存在しない街『東京』」の風景を切り取った作品集。

(リトルモア 4950円)

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