公開日: 更新日:

「和本図譜」日本近世文学会編

 蔦重の「耕書堂」の店頭には、どんな本が並べられていたのか。それがリアルに分かるのが本書だ。

 日本古来の装丁によって作られた「和本」の魅力を多くの写真で視覚的に紹介してくれる。

「ジャケ買い」の楽しみは現代人だけのものではないようで、近世の娯楽本の表紙や袋(本を包むカバーのようなもの=写真)にも読者の目を引くよう趣向が凝らされていた。

 そのひとつがエンボス加工によって立体的に文様を描く「型押」と、光の反射によって文様を浮き出させる「艶出」。

 いずれも江戸時代に広く行われていた表紙加工技術で、どちらも文様を彫った板を用いた技法だが、仕上がりは全く異なる印象をもたらす。

 読み物である草双紙や黄表紙は、ほぼすべて紙面に絵があり、絵の余白に文章が書き入れられている。その絵にも印刷過程でさまざまな技法が用いられた。

「薄墨」と呼ばれる技法は、黒でも色でもない薄墨を使った摺りは、雪や雨などの自然現象や、幽霊や妖怪などの異界の存在を描き出す。

 そうした印刷の技術から、100年以上も繰り返し刷られたという占いの本など、当時のロングセラーの内容に至るまで。さまざまな視点で「和本」の世界を案内してくれる。

(文学通信 2090円)

【連載】蔦屋重三郎が生きた 江戸の文化・生活を知る本特集

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    白鵬のつくづくトホホな短慮ぶり 相撲協会は本気で「宮城野部屋再興」を考えていた 

  2. 2

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 3

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  4. 4

    佳子さま“ギリシャフィーバー”束の間「婚約内定近し」の噂…スクープ合戦の火ブタが切られた

  5. 5

    狭まる維新包囲網…関西で「国保逃れ」追及の動き加速、年明けには永田町にも飛び火確実

  1. 6

    和久田麻由子アナNHK退職で桑子真帆アナ一強体制確立! 「フリー化」封印し局内で出世街道爆走へ

  2. 7

    松田聖子は「45周年」でも露出激減のナゾと現在地 26日にオールナイトニッポンGOLD出演で注目

  3. 8

    田原俊彦「姉妹は塾なし」…苦しい家計を母が支えて山梨県立甲府工業高校土木科を無事卒業

  4. 9

    藤川阪神の日本シリーズ敗戦の内幕 「こんなチームでは勝てませんよ!」会議室で怒声が響いた

  5. 10

    実業家でタレントの宮崎麗果に脱税報道 妻と“成り金アピール”元EXILEの黒木啓司の現在と今後