佐藤一磨(拓殖大学政経学部教授)

公開日: 更新日:

1月×日 法事のため新幹線での移動中にトイアンナ著「弱者男性1500万人時代」(扶桑社 1012円)を読む。読み進めると、「弱者男性」とは単にモテない人を指すわけではなく、介護していて自由が利かない人、虐待・犯罪被害サバイバー、多重債務者の家族、性的マイノリティー、境界知能、非正規雇用・無職者も含むことを知る。小樽商科大学の池田真介教授の推計によれば、日本には何と1100万~1500万人もの弱者男性がいるらしい。今後、日本ではさらなる高齢化と未婚男性の増加が予測されており、親の介護を担わなければならない未婚男性が増える可能性が高い。これは弱者男性の増加につながるのではないか。

2月×日 YouTubeで東大の近藤絢子先生をお見かけし、遅ればせながら近藤絢子著「就職氷河期世代」(中央公論新社 968円)を読む。読み進めると、①就職氷河期世代といっても1993~98年卒の氷河期前期世代と99~2004年卒の氷河期後期世代に分けると、後期就職氷河期の方が就職や賃金の状況が悪化している②就職氷河期世代の後の10~13年卒のリーマン震災世代でも雇用環境は悪かった③これまで日本では就職時の景気が悪いと、その後の職業人生にもマイナスの影響が大きいと指摘されてきたが、近年ではその影響が消失している、などが書かれてあった。これらの発見はどれも新規性が高く、「さすが東大の先生は研究力が違うぜ……」と打ちひしがれる。

2月×日 最近話題の冨山和彦著「ホワイトカラー消滅」(NHK出版 1133円)を読む。DXなどによる省力化・効率化やAIの普及によって、ホワイトカラーの労働需要が急速に減少する半面、地方を中心としたローカル経済の人手不足がさらに深刻化すると指摘されていた。実家が田舎であるため、この点は実感できる。冨山氏をYouTubeで拝見するとむちゃくちゃ優秀なのが伝わってくる。ただ、「この人が上司だと部下は大変だろうな」と思ってしまった。

【連載】週間読書日記

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本中学生新聞が見た参院選 「参政党は『ネオナチ政党』。取材拒否されたけど注視していきます」

  2. 2

    松下洸平結婚で「母の異変」の報告続出!「大号泣」に「家事をする気力消失」まで

  3. 3

    松下洸平“電撃婚”にファンから「きっとお相手はプロ彼女」の怨嗟…西島秀俊の結婚時にも多用されたワード

  4. 4

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  5. 5

    俺が監督になったら茶髪とヒゲを「禁止」したい根拠…立浪和義のやり方には思うところもある

  1. 6

    (1)広報と報道の違いがわからない人たち…民主主義の大原則を脅かす「記者排除」3年前にも

  2. 7

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  3. 8

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  4. 9

    自民党「石破おろし」の裏で暗躍する重鎮たち…両院議員懇談会は大荒れ必至、党内には冷ややかな声も

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」