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野地秩嘉ノンフィクション作家

1957年、東京生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務などを経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュや食、芸術、文化など幅広い分野で執筆。著書に「サービスの達人たち」「サービスの天才たち」『キャンティ物語』「ビートルズを呼んだ男」などがある。「TOKYOオリンピック物語」でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。

<第3回>態度がデカい記者、気を乱す部外者に厳しい視線

公開日: 更新日:

鉄道員(ぽっぽや)」の時もそうだった。高倉健を囲んで態度のデカい記者たちが矢継ぎ早に質問を繰り返した。そして、一段落した時、若いジャーナリストが手を挙げ、「お願いできますか」と聞いた。高倉は「はい」と言って向き直ると、ジャーナリストの質問に耳を傾けた。その時だった。遅れてきたテレビ番組のディレクターが「健さん、今度、私の番組に出てくれませんか」と無邪気に声をかけたのである。無邪気だったけれど、彼の声には「高倉健は必ず返事するに違いない」という傲慢な気配が含まれていた。

 だが、高倉健はディレクターを一瞥もせず、黙殺した。そして、時間をかけて、若いジャーナリストの質問に笑いながら、丁寧に答えたのである。高倉健はそういう人だ。マナーを守らない人間にはきびしく、若くて無名の人間にはことさらやさしかった。

 本人は「鉄道員(ぽっぽや)」の現場でわたしにこう語った。

「大切なのは『気』じゃないでしょうか。いい映画、いい撮影現場には役者やスタッフが発する気が表れています。役者だけでも駄目なんだ。役者もスタッフもともに気が入ってなきゃ。撮影現場でもみんなの気が乱れないようにしなければ。部外者が入っていると遠くにいても気になっちゃうもんなんだ。会社の偉い人が見学している時なんて特にわかるね。不思議だよ。同じ体温じゃないからかなあ」

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