ピンク・レディーが駆けた4年7カ月 稼いだ500億円は闇へ、衝撃の紅白辞退、全米進出の賭け

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2人を独断でスカウトした飯田久彦の慧眼

 ミー(未唯mie)とケイ(増田恵子)のピンク・レディー。2人は中学2年の時にケイが静岡・末広中学に転校して運命的に出会った。

 お互いの第一印象は、ケイは他の中学生がおかっぱだった中で一人だけマッシュルームカットにしているおませな女の子、ミーは逆光で髪の毛がキラキラ光っている童話から飛び出してきたような女の子だった。2人は演劇部に所属し、将来を語り合うようになり、中3の冬に静岡で行われた「スター誕生!」のオーディションに応募している。この時に本選で優勝したのは藤正樹だった。

 その後、2人はヤマハのオーディションを受けたりスクールにも通うようになり、再び「スタ誕」に挑戦するのは3年後の1974年。決戦大会でプラカードを上げたのはレコード会社3社と芸能プロ5社だった。その中で2人を熱心に口説いたのは音楽プロデューサーの相馬一比古とビクターの飯田久彦だった。

 ミーは決戦大会での相馬について「一番前に座って真っ先に私たちにプラカードを上げてくれた」と語った。相馬は「君たちをアメリカのショービジネスで勝負させてみたい」と夢が膨らんだ。

 ビクターは直前まで、決戦大会で人気がもっとも集中した清水由貴子(14社)をスカウトする予定だった。

 ところが、飯田が「独断で私たちをスカウトしてくれた」(ミー)。

■「第2のザ・ピーナッツを」

 ピンク・レディーのデビューは76年だが、その前年にザ・ピーナッツが引退している。飯田はそれが寂しかった。ハーモニーができる新たな女性デュオを探していたところ、「スタ誕」で出会ったのが2人だった。飯田は、5年前に日刊ゲンダイ連載に登場した際、「静岡出身で声質も背丈もザ・ピーナッツとは全然違うけど、2人を育ててみたいと思って」と当時を振り返ったが、会社ではこってり絞られたようだ。

 そして作詞は阿久悠、作曲は都倉俊一、振り付けが土居甫のピンク・レディーのプロジェクトが動き出す。

 当初、デュオの名前は「白い風船」だった。しかし、都倉の発案でカクテルの名前からとった「ピンク・レディー」になる。デビュー曲は阿久や都倉が押す「ペッパー警部」か、それともビクター上層部が押す「乾杯お嬢さん」か。ここでも飯田は会社の反対を押し切ってしまう。

 振り付けも物議を醸す。ピンク・レディーを「非常識な感覚でつくった」という飯田は土居にセクシーなものをお願いした。その結果が、足を左右に開く有名なポーズだが、会社の偉い人が集まる編成会議でやってもらったら、「あれはなんだ、天下の伝統あるビクターでおまえは恥ずかしくないのか」と怒られたという。だが、飯田はこれもはね返してしまった。

 この時、阿久は「総論賛成はダメ、やっぱり賛否両論でないと」と慰めてくれたという。

 こうして誕生した「ペッパー警部」は発売当初は売れず、2曲目の「S・O・S」が大ヒットし、その相乗効果でバカ売れする。ピンク・レディーはこれを機に4年半以上もスター街道を驀進することになる。そんな常識を覆すところからスタートしたピンク・レディー。一体、どこで歯車が狂ってしまったのか。78年の紅白歌合戦の出場辞退や79年のアメリカ進出に対する非難……。

 相馬は「ミーは(アメリカで)2年間でもやる覚悟はできていた。ケイは自分の尺度で考えて」いたと、かつてのインタビューで答えている。

 この時のケイが抱えていたのは結婚だった。世間を賑わせた相手との関係は間もなく終わりを告げたが、「会社から結婚か仕事か選べと迫られて結婚を選びましたが、その選択でミーはもちろん会社の人の人生まで変えてしまった」と語った。

 ピンク・レディーが稼ぎ出したのは500億円ともいわれる。それはバブルのごとく消えたが、それ以上の記憶を日本中に残したのは間違いない。(敬称略)=おわり

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