「時代に挑んだ男」加納典明(56)就寝前の瞑想「毎夜、“裸”の思考で、もうひとりの自分を見る」
アフガニスタンのあの石仏の頭の上まで登って…
加納「1969年のニューヨークを撮った写真集『NEW YORK 1969』(2014年発売。16年には『NEW YORK 1969 Ⅱ』も刊行)は人も写ってるけど主役は景色。あと、ワダツミ(日本神話の海の神。あるいは海そのもの)をやった」
増田「ワダツミ?」
加納「そういえばワダツミは写真集にはなってないな。『カメラ毎日』で70年代に連載したんだよ。ヨーロッパと日本を撮り歩いて。俺なりの一種の文明論というか。亡くなった編集長の山岸章二さんがリクエストしてくれて。海をテーマにしたものをやってくれないかという感じで。最近、写真集にしかけたんですけど、ちょっとペンディングになって、まだ出来上がってない」
増田「どういう経緯で?」
加納「写真1枚で揉めるわけじゃないけど『じゃあ、やめる』ってなった。見本まで出来ていたのに」
増田「再開はしないんですか」
加納「チャンスがあればやりたいね」
増田「月刊プレイボーイではインドに行っていますよね。1984年に。インドにもともと興味があったんですか」
加納「かなり興味がある。シルクロードとかちょっと調べた時期があってね。それの後を見に行ったというか、いろいろ。ほら、言ったよな。なんだっけ。アフガニスタンのバーミヤンに大きな石仏があったでしょう。あれの頭の上まで登ったことがある」
増田「タリバンに破壊されたやつですね」
加納「そうそう。だから、写真集になりかけてなってないのがワダツミとインドの2つあって、まだ整理がついてない。どこか手を挙げてくれればやりたいな。とにかくすごい量がある。段ボールで何箱もある。見切れないくらい」
増田「ぜひ本にしてください。歴史的にも貴重ですからね」
加納「そうだね。チャンスがあれば」
(第57回につづく=火・木曜掲載)
▽かのう・てんめい:1942年、愛知県生まれ。19歳で上京し、広告写真家・杵島隆氏に師事する。その後、フリーの写真家として広告を中心に活躍。69年に開催した個展「FUCK」で一躍脚光を浴びる。グラビア撮影では過激ヌードの巨匠として名を馳せる一方、タレント活動やムツゴロウ王国への移住など写真家の枠を超えたパフォーマンスでも話題に。日宣美賞、APA賞、朝日広告賞、毎日広告賞など受賞多数。
▽ますだ・としなり:1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。



















