著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

【北村総一朗さんのケース】前立腺導管がん ネットの「治療法ナシ」に踊らされてはいけない

公開日: 更新日:

 自らも医学博士の中松さんは手術や放射線などの治療の可能性を探り、いろいろな医療機関を受診。希少がんであるがゆえ、確立された治療法がないといわれることが相次ぎ、私の外来に来られたのです。

 結論からいうと、私の提案は待機療法でした。「がんを治療し過ぎて副作用や後遺症が出てつらい思いをすることがあります。創造ができなくなっては、元も子もないのではありませんか」とお話ししましたが、決して消極的な選択ではありません。

「悪性度が高いのに、なぜ」と思われる人もいるでしょう。中松さんは、テレビなどの前では元気でしたが、体力などは年相応に低下。過剰な治療は、体の負担と思われたのです。

 たとえば、手術の条件のひとつに、10年以上の期待余命があります。手術をすれば、寿命まで10年以上人生を楽しめる可能性が高いという意味。中松さんは当時、86歳。その先の10年の余命が果たして期待できたか。

 当時の中松さんがもっと若ければ、手術や放射線をおすすめしました。ネットの「確立した治療法ナシ」に踊らされてはいけません。このタイプも一般の前立腺がんと同じように治療を選択すればいい。中松さんの人生のテーマは「創造的な生活」でしたから、総合的に考え、それを満足できる提案をしたのです。

 ただし、彼なりに工夫され、ドクター中松セラピー(DNT)と名づけた独自療法を実践。その中身は、歌や運動で心を前向きにし、適切な食事と適度な運動で免疫力を高めるのが主な柱。どれも、高齢者には理にかなっていて、結果的に正しい選択といえるかもしれません。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    小泉進次郎「無知発言」連発、自民党内でも心配される知的レベル…本当に名門コロンビア大に留学?

  2. 2

    クビ寸前フィリーズ3A青柳晃洋に手を差し伸べそうな国内2球団…今季年俸1000万円と格安

  3. 3

    高畑充希は「早大演劇研究会に入るため」逆算して“関西屈指の女子校”四天王寺中学に合格

  4. 4

    9日間の都議選で露呈した「国民民主党」「再生の道」の凋落ぶり…玉木vs石丸“代表負け比べ”の様相

  5. 5

    国分太一コンプラ違反で無期限活動休止の「余罪」…パワハラ+性加害まがいのセクハラも

  1. 6

    野球少年らに言いたい。ノックよりもキャッチボールに時間をかけよう、指導者は怒り方も研究して欲しい

  2. 7

    「時代と寝た男」加納典明(19) 神話レベルの女性遍歴、「機関銃の弾のように女性が飛んできて抱きつかれた」

  3. 8

    ドジャース大谷「二刀流復活」どころか「投打共倒れ」の危険…投手復帰から2試合8打席連続無安打の不穏

  4. 9

    28時間で150回以上…トカラ列島で頻発する地震は「南海トラフ」「カルデラ噴火」の予兆か?

  5. 10

    自転車の歩道通行に反則金…安全運転ならセーフなの? それともアウト?