冠動脈バイパス手術を一度に8箇所行うケースもある
狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患を治療する大きな柱のひとつが「冠動脈バイパス手術」です。虚血性心疾患は、心臓の筋肉に酸素や栄養を送るための血管=冠動脈が細くなったり詰まってしまうことで起こります。
そこで、狭くなったり詰まっている血管に対して、他部位の血管を使って迂回路=バイパスをつくり、心筋への十分な血流を確保できるようにするのです。
バイパスをつくる部分は1カ所とは限りません。冠動脈が何カ所も詰まったり狭窄している患者さんの場合、すべての血管にバイパスをつくり、血流を再開することが理想的といえます。ただ、患者さんの心臓の状態や体力によって、すべての箇所でバイパスをつくることができないケースはたくさんあります。
当院で行っている冠動脈バイパス手術では、患者さん1人当たり平均3・8カ所のバイパスをつくっています。これまで、最も多くつくったバイパスは8カ所で、年間に1人か2人はそうした患者さんの手術を行っています。
バイパスをつくる処置そのものは、1カ所であれば10分程度です。トータルの手術時間は使う血管の準備も含めて4時間くらいで終わります。これが8カ所になるとその分以上に時間が加算され、トータルで6時間ほどになります。バイパスをつくる箇所が増えれば、単純にそれだけ手術時間が長くなるのです。