著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

【かっけ】国内試験は麦・パン食+肉増量で患者数ゼロに

公開日: 更新日:

 海軍軍医の高木兼寛は犬の実験に先立って、囚人を対象にした実験を行っています。陸軍が「監獄での麦飯の導入後のかっけ減少」をもとに、麦飯によりかっけを減少させたことと関係しているかもしれませんが、よくわかりません。少なくとも、陸軍の取り組みのほうが高木の実験に先んじていたというのが事実のようです。

 高木の囚人食の改善方法を見てみましょう。明治16年の改善前には、主食はすべて白米で肉食が少ない状態でした。それに対し明治17年以降の改善食では、麦・パン食が加えられ、肉食が1.5倍ほどに増量されています。その結果、61%のかっけ発症率が同年に57%、2年後の明治18年には0%になったことが示されています。

 囚人に対する臨床実験は海外でも行われています。明治28年のことです。エイクマンがニワトリの実験を行った同じインドネシアで、オランダの医師監察官フォルデルマンが囚人を対象に実施しています。全員に肉を与えたうえで、白米のみを食べるグループ、白米と玄米半々のグループ、玄米のみのグループで1年8カ月の観察をしたところ、白米のみのグループでは2・79%にかっけが発症したのに対し、白米と玄米半々のグループでは0・24%、玄米のグループでは0・01%とかっけの劇的な減少を認めました。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 2

    巨人・桑田二軍監督の電撃退団は“事実上のクビ”…真相は「優勝したのに国際部への異動を打診されていた」

  3. 3

    クマ駆除を1カ月以上拒否…地元猟友会を激怒させた北海道積丹町議会副議長の「トンデモ発言」

  4. 4

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  5. 5

    クマ駆除の過酷な実態…運搬や解体もハンター任せ、重すぎる負担で現場疲弊、秋田県は自衛隊に支援要請

  1. 6

    露天風呂清掃中の男性を襲ったのは人間の味を覚えた“人食いクマ”…10月だけで6人犠牲、災害級の緊急事態

  2. 7

    高市自民が維新の“連立離脱”封じ…政策進捗管理「与党実務者協議体」設置のウラと本音

  3. 8

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 9

    恥辱まみれの高市外交… 「ノーベル平和賞推薦」でのトランプ媚びはアベ手法そのもの

  5. 10

    引退の巨人・長野久義 悪評ゼロの「気配り伝説」…驚きの証言が球界関係者から続々