著者のコラム一覧
高橋三千綱

1948年1月5日、大阪府豊中市生まれ。サンフランシスコ州立大学英語学科、早稲田大学英文科中退。元東京スポーツ記者。74年、「退屈しのぎ」で群像新人文学賞、78年、「九月の空」で芥川賞受賞。近著に「さすらいの皇帝ペンギン」「ありがとう肝硬変、よろしく糖尿病」「がんを忘れたら、『余命』が延びました!」がある。

「がん告知されたら仕方ない。堂々と泣いてみるのもいい」

公開日: 更新日:

 しかし、地元のシェルパにしてみれば、山に登ることは日常の生活でしかない。私はスポーツジムにも興味はないし、ジョギングすることにも興味がない。好きとか嫌いではなく、単に興味が持てないということだ。

 長生きしたいから健康でいたいという人たちがいる。本来は何かしらの目的があるから長生きするという、手段が先でなくてならないだろう。

 今も忘れられないのは、映画製作をした際、山梨県の小淵沢までロケに行くお金がなくなり、妻と幼い娘に車を乗ってこさせ、八王子の中古車店で30万円で売ったことだ。そのとき、帰りの足を失った妻が3歳の娘と手をつないで坂道を上っていく後ろ姿が脳裏に焼き付いている。そのとき、家族を不幸にしてまで得る夢なんかあるものかと思った。

 娘は今、夫の仕事の都合でアメリカの西海岸に住んでいる。昨年、孫の顔を見るため、妻と行ってきた。娘の案内で見たドジャースタジアムの野球には感動した。

 がん告知を受けたら仕方ない。言われたらさすがにショックだろうが、北海道にでもどこでも行ったらいい。そして堂々と泣いてみる。そうしたら人としての深みも出てくるだろう。

 自分はとにかく仕事をしたし、スポーツも遊びも好きなだけしてきた。

 (おわり)

【連載】余命4カ月と言われた私が今も生きているワケ

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  2. 2

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 3

    未成年の少女を複数回自宅に呼び出していたSKY-HIの「年内活動辞退」に疑問噴出…「1週間もない」と関係者批判

  4. 4

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  5. 5

    2025年は邦画の当たり年 主演クラスの俳優が「脇役」に回ることが映画界に活気を与えている

  1. 6

    真木よう子「第2子出産」祝福ムードに水を差す…中島裕翔「熱愛報道」の微妙すぎるタイミング

  2. 7

    M-1新王者「たくろう」がネタにした出身大学が注目度爆上がりのワケ…寛容でユーモラスな学長に著名な卒業生ズラリ

  3. 8

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  4. 9

    高市政権の積極財政は「無責任な放漫財政」過去最大122兆円予算案も長期金利上昇で国債利払い爆増

  5. 10

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手