著者のコラム一覧
下山祐人あけぼの診療所院長

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

母親を亡くした息子が怒りをあらわに…重要性を痛感したACP

公開日: 更新日:

 そしてそれから2カ月後の年の暮れ。徐々に食事が細くなり、お母さまは静かに旅立たれていかれました。

 残された息子さんもさぞかし私たちと思いを一つにして、全力投球でやり切ったものと思っていたのですが、突然、息子さんが私たちに怒りをぶつけてこられたのです。

「今まで我慢してきた。大丈夫、様子を見ようと言われるままにしてきた。どうせ死んでしまう患者は、一生懸命診ないと思っていたら、案の定メールの返信も短くなってきていたし。もうどうでもいいのか!」

 思いがけない言葉に戸惑うばかりです。

 あの時もう少し早い時期から、悪い知らせに関して明確に息子さんと情報を共有し、いざそういう時が来たらどのようにすればいいか、どんな気持ちか、事前にお話しするべきだったと反省しました。

 そして、患者自らが望む療養や看取りのあり方など、生前の意思表明を家族と一緒に事前に明確にしておく人生会議(ACP)を作成することも有効だったのではと……。

 このACPはまだまだ一般に浸透しているとはいえません。この意思表明もご家族の覚悟を促すきっかけになり、看取った後のショックからくる怒りや、不安を少しでも軽減できるのではと考えています。

 いずれにしても患者さんとご家族の体だけでなく、心も健やかなるために、より一層、邁進することがこれからの在宅医療には求められるのではないでしょうか。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    さすがチンピラ政党…維新「国保逃れ」脱法スキームが大炎上! 入手した“指南書”に書かれていること

  2. 2

    国民民主党の支持率ダダ下がりが止まらない…ついに野党第4党に転落、共産党にも抜かれそうな気配

  3. 3

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  4. 4

    来秋ドラ1候補の高校BIG3は「全員直メジャー」の可能性…日本プロ野球経由は“遠回り”の認識広がる

  5. 5

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  3. 8

    脆弱株価、利上げ報道で急落…これが高市経済無策への市場の反応だ

  4. 9

    「東京電力HD」はいまこそ仕掛けのタイミング 無配でも成長力が期待できる

  5. 10

    日本人選手で初めてサングラスとリストバンドを着用した、陰のファッションリーダー