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下山祐人あけぼの診療所院長

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

採用基準の“肝”は「患者の生活を丸ごと支える」覚悟があるかどうか

公開日: 更新日:

 これまでにもお伝えしてきましたが、在宅医療で働くスタッフを採用する時の基準として重要視しているポイントは、他のスタッフとの協調性ももちろんですが、「自宅だからこそ自分らしく患者さんが過ごせる」という価値観を他のみんなと共有し、それを実現するために、できる限り取り組めるかということです。

 この採用基準を明確に設けるきっかけとなった、ある経験を紹介したいと思います。

 それは当院が開院して7カ月ほど経った頃、20代半ばの看護師を採用しました。もともと病棟の勤務である程度経験を積んできた女性で、在宅診療という新しい場所で自分の仕事の幅を広げたいという前向きな動機で入職してきたのです。ところが当時、診療所内の業務の取り組み方が、各スタッフが自分が担当する業務を丸抱えし、詳細な内容については担当者以外分からない……という状況。いわゆる「属人化」していたため、忙しいスタッフと、そうでないスタッフとで二極化しており、彼女は後者のスタッフとなったのでした。

 実際そのスタッフは携帯でゲームをしたり、SNSで「暇だー」とつぶやいたり、時に医療事務のスタッフに話しかけては、プライベートな無駄話を延々としたりしていました。医療事務のスタッフにとっては算定業務の邪魔をされるわけで、その結果、現場の診療パートナーは内勤の後方支援が受けられず、移動の車の中で事務処理をするといった最悪な状況となっていました。最終的には残念ながら解雇としたのですが、なんとも後味の悪いこととなってしまいました。

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