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永田宏前長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

「血液型」でがんのリスクが予想できる時代が近づいている

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A型はO型より1.2倍胃がんになりやすい

 たとえば2010年に発表された、スウェーデンとデンマークの合同研究があります。両国の献血者データベース(血液型が分かる)とがん患者データベース(胃がんにかかった人が分かる)をマッチングさせたところ、A型はO型と比べて1.2倍、胃がんになるリスクが高いことが示されました。データ解析の対象になったサンプル数は、100万人以上でした。

 また2009年にアメリカの研究グループが、膵臓がんとの関係を調べた論文を発表しました。対象となったのは、病院に勤務するナース10万7000人(男性3万人、女性7万7000人)で、1996年からの10年間、延べ93万人に達するビッグデータでした。この研究では、O型の膵臓がんリスクを1とすると、A型1.32、AB型1.51、B型1.72という結果が得られています。つまりB型がもっともリスクが高く、O型と比べて2倍近く膵臓がんにかかりやすいことになります。

 さらに、いままでに発表された論文を総合的に評価するメタアナリシスやシステマティックレビューと呼ばれる解析方法が発展してきました。全がんリスク(すべてのがんに対する総合的なリスク)は、O型を1とすると非O型が1.2、とくにA型(AB型を含む)では1.3以上という数字が出ています。

 ただし患者が多い大腸がん乳がんの評価がまだ固まっていないため、今後もう少し数字が上下する可能性はあります。ただA型が全がんリスクが高いというのは、世界的にコンセンサスが得られており、今後も変わることはないでしょう。

 血液型とがんの研究の中心は、アメリカとヨーロッパです。それらの国々では、血液型の偏りが大きく、O型とA型で人口の9割近くを占め、B型とAB型はかなり少数派になっています。そのためB型とAB型の全がんリスクの計算は、統計的なゆらぎが大きく、評価がまだ定まっていない状況にあります。

 近年、中国からの論文が増えてきました。また日本からの論文も、数は少ないですが、着実に増えています。中国は、地域にもよりますが、B型が人口の3割近く、AB型が1割近くを占めています。また日本人は、B型が2割、AB型が1割です。欧米の研究結果と合わせれば、より正確な数字が見えてくることが期待できます。

 血液型という、ごく身近で簡単な指標から、がんのリスクがある程度予測できる。そんな時代が訪れようとしています。

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