著者のコラム一覧
東敬一朗石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

クスリの影響で唾液が出なくなると“食べる”に悪影響が生じる

公開日: 更新日:

 深く考えたことがないかもしれませんが、「唾液」の役割は実に多様です。そして、唾液は“食べる”うえで極めて重要な役割を持っています。

 唾液にはアミラーゼという酵素が含まれています。アミラーゼは炭水化物を消化する働きがあるので、唾液は「消化」の役割があります。また、口の中に潤いを与えることで、清潔を保つというのも唾液の重要な役割です。唾液がないと口の中の汚れが洗い流せないというと、想像しやすいかと思います。

 唾液は“もぐもぐ(咀嚼=そしゃく)”と“ごっくん”に必要不可欠です。これまで、口腔期では食べものを咀嚼しながら舌の上でお団子=食塊を作り出しているとお話ししましたが、唾液はその際に「つなぎ」の役割を担っています。言い換えると、唾液がないと食塊が作り出せないということになります。食塊が作り出せないということは「のみ込めない」と同じ意味ですから、つなぎとしての唾液の重要性がおわかりいただけると思います。

 そして、仮になんとか食塊が作り出せたとしても、次にそれを喉に送り出さなければいけません。唾液はその時に「潤滑」の役割も持っています。パサパサの塊と潤った塊、どちらがつるっと滑って送り出しやすいかを想像してみてください。唾液が持つ「つなぎ」と「潤滑」の役割は、“食べる”ために必要な力のうち「嚥下(えんげ)」にとってとても重要なのです。

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