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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

統計学的に「正しい」が薬を飲む「正しさ」にはつながらない

公開日: 更新日:

■ランダム化比較試験の結果はあくまで確率

 高血圧の治療の専門家ですら、これが現実であった。少なくとも医学的な「正しい情報」すら正しくは認識されていないし、何が正しいかということ自体、必ずしも共通の認識がなかった。それが今から40年前である。

 ただ40年を経て、治療や予防効果について、病態生理は重要だが仮説に過ぎず、ランダム化比較試験とそのメタ分析によって統計学的に効果が示される必要があるという共通の認識は、多くの医者に共有されるに至った。

 これは大きな進歩ではあったが、大きな副作用もあった。この「正しい情報」もまた「統計学的に正しい情報」に過ぎない。個別の人にとって正しいかどうかはまた別問題である。ランダム化比較試験によって示されるのは、5年間で10%の脳卒中が6%にまで少なくなるというあくまで確率である。これが統計学的にも意味のある差だと言われても、薬を飲む個人の中には「10%も6%も四捨五入すれば似たようなものではないか。それを効果ありとするのは薬を売りたい製薬会社の陰謀ではないか」という人が現れても不思議ではない。

「統計学的に正しい情報」から、「薬を飲むこの人にとって正しい情報」までの距離は遠い。「医学的に正しい情報」「社会にとって正しい情報」と言っても、「統計学的に正しい情報」とはずいぶん距離がある。

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