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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

「統計学的検討」の指標はさまざま 何が起きているかをどう表現するか

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 ここでまずお伝えしたいのは、結果の表現の仕方はさまざまということである。相対危険を使って100の感染を86まで減らすともいえるし、相対危険減少を用いて14%少なくするといってもいいし、絶対危険減少で0.3%減らすということもできる。さらには334人にマスクを推奨して1人の感染を予防できると治療必要数で表すこともできる。

 どの指標が正しいということはない。すべて正しい指標である。この論文では、相対危険のひとつであるオッズ比=0.82で報告されている。先ほどの相対危険の計算は両群の発症者の割合の比をとっているが、論文では割合でなく、オッズの比をとって相対危険を計算しているため若干の違いが生じている。オッズと割合の違いについて、ここでは説明を省略するが、コロナの発症割合が数%というレベルでは近似できると考えてよい。実際に割合の比でも先に計算したように0.86と似たような数字になる。

 ここでは論文の結果であるオッズ比0.82を使って考えてみよう。

 100のコロナ感染が82にまで少なくなるという結果であるが、1.8%と2.1%のまま比較していた時と比べて印象がどのように変わるだろうか。1.8%と2.1%だと似たようなものだと感じる人が多いだろう。それに対して100から82にまで少なくなるといわれると、先ほどより効果があると感じる人が多くなるのではないだろうか。これを相対危険減少で18%予防するといわれると、さらに効果的という気がしてくる。

 多様な指標の中で、論文で使用されるのはもっぱら相対危険、相対危険減少の割り算の指標である。この背景には、「論文では治療効果を大きく見せたい」というバイアスがある。

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