著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

「メタ分析」が最良のエビデンスとは限らない…出版バイアスと異質性バイアス

公開日: 更新日:

 前回、「メタ分析」は多くのバイアスの影響を受けやすいという点を指摘した。それについて、実際の論文をもとにもう少し詳しく見ていこう。

 まずは「出版バイアス」を取り上げよう。一般に研究結果は、効果があると論文として発表、出版される。逆に効果がないと出版されないという傾向がある。そのため発表された論文だけを集めると、効果があるという論文に偏って情報が集められ、効果を過大評価しやすい。これを「出版バイアス」と呼ぶ。メタ分析の重要なバイアスのひとつである。

 前回取り上げたマスクなどの予防効果を検討したメタ分析で、この出版バイアスがどのように取り上げられているかを見てみると、出版バイアスについての直接の記載はない。一般的には出版バイアスは漏斗図、ファンネルプロットと呼ばれる図で検討される(編集部注=漏斗はファンネルとも呼ばれ、液体を口の狭い瓶などに入れるときに使う逆三角形の形のもの。個々の研究の結果の散らばりが漏斗を裏返した形、つまり規模の小さい研究で左右に広く対照的に分布し、大きな研究で中央に狭く分布する形になるのが理想とされる)。これはX軸に効果の大きさを、Y軸に研究の標本数をとり、一つ一つの研究をグラフにプロットしたものである。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  4. 4

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  5. 5

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  1. 6

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    矢地祐介との破局報道から1年超…川口春奈「お誘いもない」プライベートに「庶民と変わらない」と共感殺到

  4. 9

    渡邊渚“逆ギレ”から見え隠れするフジ退社1年後の正念場…現状では「一発屋」と同じ末路も

  5. 10

    巨人FA捕手・甲斐拓也の“存在価値”はますます減少…同僚岸田が侍J選出でジリ貧状態