著者のコラム一覧
森大祐整形外科医

整形外科全般診療に長年携わる。米国トーマスジェファーソン大学で人工肩関節の臨床研究を行い、2000例超の肩関節手術を経験。現在は京都下鴨病院で肩関節や肘関節、スポーツ障害患者に診療を行う。サイトで整形外科疾患の情報を発信。

一部はつながったままの腱板断裂は、治ったか否かの画像診断が困難

公開日: 更新日:

 骨や軟骨、血管、心筋細胞に分化できる能力を持つ間葉系幹細胞。これを使った再生医療(脂肪由来間葉系幹細胞移植)は、非常に将来性のある治療法として期待されているものの、肩疾患への治療効果を判定するのはまだコンセンサスが得られていません。

 間葉系幹細胞移植治療を、肩の腱板が断裂する「肩腱板断裂」に対して行う施設はいくつかありますが、間葉系幹細胞移植で腱板が再生したと言い切ることは難しい。というのも、断裂した腱板が治癒したかどうか、MRI画像で証明することが困難だからです。

 完全に断裂している(=骨から腱が完全にはがれている)場合は、治療後の確認はスムーズです。MRIで100%診断できるからです。問題は、一部はつながったままの不全断裂の場合です。MRIの診断率は50~70%。ばらつきがかなりあるのです。

 肩の腱板断裂では、治療で腱板断裂を治せなくても、時間の経過とともに腱様組織ができることがあります。腱板断裂の部分がほんの少しであれば、他の組織が断裂部分に入り込み、腱と同じような役割を担えるようになるのです。実際、JOSTという医師が腱板断裂手術の数年後、小さな再断裂が塞がっていることを確認したと、2006年にJBJSという雑誌で報告しています。これは、腱板断裂治療直後のMRI判定の不確定性を物語っています。

 間葉系幹細胞移植は、保険適用の治療ではありません。それゆえに、高額な費用がかかります。肩疾患において、効果があるとはっきり言えない状況の中、あえてこの治療を選択すべきかどうか。現段階では、治療施設の医師と徹底的に相談することをお勧めします。 

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  2. 2

    横綱・大の里まさかの千秋楽負傷休場に角界から非難の嵐…八角理事長は「遺憾」、舞の海氏も「私なら出場」

  3. 3

    2026年大学入試はどうなる? 注目は公立の長野大と福井県立大、私立は立教大学環境学部

  4. 4

    東山紀之「芸能界復帰」へカウントダウン着々…近影ショットを布石に、スマイル社社長業務の終了発表か

  5. 5

    「総理に失礼だ!」と小池都知事が大炎上…高市首相“45度お辞儀”に“5度の会釈”で対応したワケ

  1. 6

    大関取り安青錦の出世街道に立ちはだかる「体重のカベ」…幕内の平均体重より-10kg

  2. 7

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  3. 8

    義ノ富士が速攻相撲で横綱・大の里から金星! 学生相撲時代のライバルに送った痛烈メッセージ

  4. 9

    同じマンションで生活を…海老蔵&米倉涼子に復縁の可能性

  5. 10

    独立に成功した「新しい地図」3人を待つ課題…“事務所を出ない”理由を明かした木村拓哉の選択