恩人のアドバイスがなければ…富田晶子さん乳がん闘病を振り返る

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復帰の舞台では震えが止まらかなかった

 2週間で退院し、その後は毎日のように通院して放射線治療を25回ぐらい受けました。ビビッて上がらない左腕をなんとかリハビリで回復させて、無事にステージはできました。でも舞台で震えが止まりませんでした。1000%の気持ちでパフォーマンスしても、気持ちじゃ補えないものがあることを初めて実感しました。

 今は3カ月か半年に1回検査を受ける経過観察中です。

 一番つらかったのは、やはり入院中です。私の場合は、切除して細胞を検査しないと治療法が決まらなかったので、いろんな可能性を想像して怖くなりました。ついつい気になってネット検索すると、「余命」みたいなことが書いてあったりして、不安が煽られました。なるべく乳がんについて考えない努力をしていた気がします。それでも、ベッドで1人きりだと自分だけ別の世界にいるような、世の中から切り離されてしまったような感覚に襲われました。

 支えだったのは、友人や所属事務所の方のお見舞いでした。そのうれしさは忘れられません。寄せ書きの色紙やお手紙は今でも大事にしています。また何かあったら“再利用”するつもりで(笑)。人の支えは必要なんだと心から思いました。

 それまでの私はフレアがあればそれでいいと思って生きていたんです。一にも二にも練習で、友達と遊ぶ時間があるなら練習したいと考えるタイプでした。それほど打ち込んでいたフレアだったからこそ、手術後に「できなくなったら……」という恐怖心で腕が上がらなかったのだと思います。

 でも、死を意識する経験をしたことで「本当にその生き方でいいのか?」と思ったのです。フレア以上に大事なものがあると気付いて、友達といろいろな話をするようになりましたし、自分も周りの人をヘルプできる存在でありたいと思うようになりました。

 そして気付いたら、私の周りにヘルプを必要とする人が集まってくるようになりました。小さいことですけど、たとえばエレベーターで脚の不自由な人が乗ってきたり、妊婦さんが目の前に立っていたり……。それまでは気付かなかっただけかもしれませんが、毎日のようにちょっとしたヘルプをして今は過ごしています。

 伝えたいのは、自分を過信しないで健診には行った方がいいということと、病気になってしまっても「1人じゃないよ」ということ。諦めなければ見えてくる違う幸せがあるから。生きて関われた人たちの大切さに気付けて私は今ハッピーです。今フレアができていることも、主治医の先生や友達など、ずっと支え続けてくれた方がいたからなので、感謝の気持ちは忘れずに、人に元気を与えられるようなパフォーマンスをこれからもしていきたいです。

(聞き手=松永詠美子)

▽富田晶子(とみた・しょうこ)新潟県生まれ。トム・クルーズ主演映画「カクテル」に影響を受け、フレアバーテンダーを目指す。2009年にフレアバーテンダーの国際大会「JamSession2009」で世界初の女性優勝者となり注目を浴びる。現在はストーリーのあるパフォーマンスやマジックなどを取り入れ、プロのショーテンダーとして国内外で年間約250本のショーを行っている。

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