著者のコラム一覧
天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

不整脈に対する「重粒子線治療」の期待と課題

公開日: 更新日:

 重粒子線で不整脈を治療する--。国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構で、そうした研究が進んでいるといいます。

 重粒子線とは放射線の一種で、炭素イオンを光の速さの70%まで加速したものです。それを病巣に照射して病巣を破壊し、治療するのが重粒子線治療です。

 放射線には光子線と粒子線があり、従来のいわゆる放射線治療では光子線であるエックス線とガンマ線が使われます。一方、粒子線に該当するのが重粒子線や陽子線で、大型加速器の開発や進歩により、医療に利用されるようになりました。

 光子線であるエックス線やガンマ線は、体外から照射すると体の表面近くで放射線量が最大になり、体内を進むにつれて減少します。そのため、体の奥深いところに病巣がある場合は十分なダメージを与えることができません。また、「物体を突き抜ける」という放射線の性質から、病巣だけでなく正常組織にもダメージを与えてしまう弱点があります。

 一方、粒子線である重粒子線や陽子線は、エネルギーを減らしながら体の中をある程度進んでいき、消滅する寸前に放射線量が最大になる性質があります。その性質を利用して、病巣部だけに高エネルギーをぶつけて破壊しつつ、周囲の正常細胞にはなるべく悪影響を与えない治療が可能になりました。

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