(24)言い合いになるのが嫌で父への連絡は必要最小限となっていた

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 いよいよ年末に差し掛かったある日、父から珍しく郵便が届いた。現金書留だった。中には7万円が入っており、何の説明もなかった。気は進まなかったが、私は「これはいったい何のお金?」と電話をしてみた。すると、がんで下顎を取り去ったため、発する言葉の聞き取りにくかった父が、はっきりと聞こえるようにゆっくりとこう言った。「いいから、有意義に使いなさい」と。

 私はうまく反応できなかった。母のことにかかりきりで、父とは対立し、自分の感情を整理する余裕もなかったのだ。そのまま電話を切ってしまったが、父のその声はしばらく耳に残っていた。何かを察していたのだろうか、それとも単なる気まぐれだったのか。これが父との最後の会話になることを、私はそのときまだ知らなかった。

 あのときの声だけが、今も不思議と耳に残っている。何げないやりとりのはずだったのに、そのひと言だけが、妙に澄んで響いていた。 (つづく)

▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。

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