愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97～2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」（第200回）で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」（光文社新書）などがある。
「言語聴覚士」が関わる摂食嚥下機能の回復はどうして大切なのか
さらに、患者さんがのみ込みやすい食器を検討するなど、より安全に食事ができるような工夫を試みます。もちろん、必要なカロリー量とタンパク量を考慮したおいしい食事を提供することが大前提です。
こうした摂食嚥下訓練は、最大で1日合計3時間（1回40分×4回＋20分1回など）と定められているリハビリの時間のうち、1回分を20分から60分間かけて1回介入するのが当院では一般的です。残り2回の食事は言語聴覚士の設定した条件で看護師が介入します。
言語聴覚士は、患者さんの状態を正確に把握したうえで、毎日の改善度に応じた適切な摂食嚥下訓練を提供します。特に、訓練の最中に誤嚥の兆候がないかどうかをしっかり観察し、迅速に医師と連携して対処することが重要です。
当院ではこうした摂食嚥下訓練に取り組んで、しっかり食べられるように回復した患者さんはたくさんいます。自分の口から食べるというのは人間にとってとても大切な行為ですし、筋力や体力、認知機能を維持して要介護状態を防ぐ栄養摂取のためにも欠かせません。言語聴覚士は、そんな生命機能の回復に関わる重要な役割を担っているのです。
