死んだほうがラクだと思った…芸人いのけんさん大腸がんとの闘い語る

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家族の存在が何より力になった

 それから3カ月に1回、CTや血液検査をしていた中で、22年5月末に直腸への転移が見つかりました。1度目のときよりも沈みました……。でもこのときも妻は前向きで、「次にストーマを作ったらもう一生ストーマだろうから、ストーマになったらできないことをしようよ」と言ってくれて、手術までの2週間で、砂風呂に行ったり、野球好きな僕のために「ヘッドスライディングやろうよ」と砂浜へ行ったりして、楽しみながらカウントダウンしました。

 手術で直腸を切除し、小腸から先がなくなったので再びストーマを作り、そこから排泄する暮らしになりました。一生もののストーマです。ショックといえばショックですけど、一人じゃなかったから助かったと思っています。家族の存在が何より力になりました。

 というのも、20年1月に結婚をして、同年9月に初めの大腸がんが発覚し、21年12月に長女が生まれて、22年5月に直腸への転移が見つかり、23年10月に次女が生まれたという、天国と地獄の行ったり来たりだったのです。先輩には「おまえ、祝福していいのか、心配していいのかどっちなんだ」と言われました(笑)。

 子供の“支え”が一番大きかったですね。「この子たちを残して逝けない」という思いが、大きなパワーになりました。家族以外の周りの方々のサポートももちろん力になりました。それらがなければとても乗り切れなかったと思います。

 病気に限らず、人はいつどうなるかわからないから、明日からやろうとか、来年からやろうとかじゃなく、日々後悔しないような生き方をしようと思うようになり、毎日が充実しています。

 みなさんに「人間ドック行ってくださいね」と言って回ってます。説得力があるようで、後日「大丈夫だったよ」と言われるのが本当にうれしい。健康なときこそ健康のありがたみを忘れるので、言い続けるのが自分の使命みたいな気になっています。

 おかげさまで、15歳から患っていた潰瘍性大腸炎の薬が処方されなくなりました。大腸がないのだから、そりゃそうですよね(笑)。

(聞き手=松永詠美子)

▽いのけん 1989年、福岡県出身。芸能系の専門学校を経て2009年に芸人デビュー。「水曜日のダウンタウン」(TBS系)、「有吉ベース」(フジテレビONE)などテレビやラジオのほか、14年には映画「青天の霹靂」に出演した。10年から太田プロJrライブに出演。ユーチューブ「いのけんチャンネル」も配信中。

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