マクロライド系抗菌薬に耐性を持つ「百日咳菌」が増えている
前回に引き続き、「百日咳」についてお話しします。百日咳は、ボルデテラ・パータシスという細菌によって引き起こされる呼吸器感染症です。潜伏期間は7~10日、発症するとカタル期→痙咳期→回復期と経過し、約2~3カ月で回復するとされています。
カタル期(約2週間持続)は風邪症状で始まります。このカタル期に適切な抗菌薬(マクロライド系)を開始した場合のみ、咳症状の期間短縮や重症度軽減が期待できるとされていますが、通常の風邪と見分けがつきにくいため診断が遅れることも多く、抗菌薬投与が症状改善に寄与するケースは限られるのがほとんどです。
また、最近はマクロライド系抗菌薬に耐性の百日咳菌の頻度も増加しているようです。耐性菌が疑われる場合やマクロライド系抗菌薬にアレルギーがある患者さんには、ST合剤が用いられることもあります。
カタル期の後は、痙咳期と呼ばれる期間が約2~3週間持続します。痙咳期では、「コンコンコンコン……ヒューッ」と息を吸い込む「レプリーゼ」という独特の咳き込みに移行します。夜間の発作が多く、乳児では特徴的な咳がないまま無呼吸発作、チアノーゼ、けいれんなど重症化しやすいため注意が必要です。