著者のコラム一覧
永田宏長浜バイオ大学元教授、医事評論家

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

(4)広がる混合診療…薬はあるのに使えない患者が増えている

公開日: 更新日:

 あるいはアトピー性皮膚炎です。中等度から重症の患者に対しては、デュピルマブというバイオ医薬が効果的です。2週間ごとに患者が自己注射するのですが、その価格は3割負担で約1万6000円。毎月2本ずつ打つと、約3万2000円となります。

 これらの薬は、病気の症状や進行を抑えるのによく効きます。しかし病気自体を治すものではなく、多くは「効果が続く限り」使い続けることが推奨されていますし、効かなくなれば、別の高価な薬に切り替えていくことになるのです。

 しかし高額療養費制度の限度額にかからないため、治療を続ける限りはそれだけの金額を払い続けなければなりません。中間層や低所得層にとっては、決して安い金額ではないのです。そのため経済的な理由から、使用を中断する人が増えており、医療現場で深刻な問題として語られ始めています。いい薬があるのに金がなくて諦めざるを得ない患者が大勢いる。それが日本の医療の現実になりつつあるのです。

 一方、高所得層にとっては、確かに高い薬には違いないですが、払えない金額ではありません。つまり慢性疾患によく効く高額な薬を使い続けられるかについて、貧富の格差が大きく反映されつつあるということです。その意味で、混合診療がすでに始まっていると言えそうです。そして高額療養費の限度額の引き上げがもし実現すれば、この状況にさらに拍車がかかることになるのです。

 私たちにできることは、国に任せっきりだった医療にかかる資金や知識を自分たちで賄うために準備することなのです。 =おわり

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